かなり呑んで帰宅した。翌日の仕事のことを考えてトイレで静かに吐いた。

耳鳴りがする。喉の奥に違和感がある。胃が締め付けられるように痛い。肌がカサカサ。ストレスが原因らしい。

前向きな考えやアドバイスはできるが腰が重い。

“男らしい”とか“女らしい”とかより“人間らしい”がいい。

グレープフルーツジュースをビールで割ったら不味かった。

馴染みの居酒屋でウナギパスタを作ったら好評でうれしかった。

昔の恋人が夢に出てきてボクに一生懸命に何かを話してくれるが耳が聞こえないから何もわからない。

夢の中で愛用しているメガネが割れていた。

66歳のオバチャンから絵本をもらった。読んだら泣いた。

今まで積み重ねてきたコトが白紙になったから貯金を募金にかえた。

司会として参加するコンパの前にサウナを楽しんだ。友達が楽しそうにしていたから良かったと思った。

素直がいい。

右手に拳を握り天に掲げ左手でチンチンを掴んでみた。ジーパンの上からチンチンは掴みにくいことを再確認した。

馴染みの居酒屋で名古屋から息子を迎えに来てた親子と仲良くなった。寒い季節が終わったら家に遊びに行くと約束をした。いいお父さんだった。

チンチンの皮が長くなったなぁと思ったら雪が降っていた。

髪を切りに行ったら前回に髪を切ったのが2年前だとわかった。

給料が上がった。

役作りでもないのにダラダラとヒゲを伸ばしていたが会社の表彰式があったからヒゲを剃った。

初めて会う人の誕生日パーティーに出席した。

後輩に心配をかけたうえに酒をご馳走になった。そして弱音をはいた。

オッパブでパブリック。

少し太った。

粕汁を頻繁に作る。

キンタマが金剛力士像の顔面みたいにいかつくなってるなぁと思ったら雪が降っていた。

今日もたらふく呑んだ。

今年で中学23年生になるけど、まだ卒業できそうにない。

めでたし、めでたし。


【歌謡日“六”】





重い腰。



腰が重い。悪い癖が出た。バンドを結成したものの、何もしない日々が続いた。そんな時にオオクマ君から連絡が入った。内容は“職場で知り合ったフジモという後輩の家で呑むから来ないか?”というものだった。もちろん快諾した。オオクマ君の顔でナカムラ君とボクはフジモの家で呑むことになった。



ジャージー。



フジモの家で呑む当日、ボクたちは“仕込み”の意味を込めて“高校のジャージー”をカバンに潜めていた。3人とも同じ高校に通っていたのでお揃いだ。気持ち悪い。何も知らないフジモは最寄りの駅までボクらを迎えに来てくれた。ありがたい。ボクたち3人は車に乗り込んだ。後部座席に3人で座る。助手席にはフジモ。運転手はフジモの母上様。そう。巨大チンコが誘ってきた“フジモの家で呑む”とは“フジモの実家で呑む”だったのだ。車は山を上り“高級住宅地”へと入り、やがて停止した。そしてリモコンを操作する母上様に従うようにガレージの扉が開いた。後部座席のチンピラ3人は声を押し殺しながら“すげー!”と興奮した。危うく勃起するところだった。フジモの家は凄かった。まず、フジモの部屋は広かった。モト冬木のデコより遥かに広い。15畳はありそうだった。そこには生ドラム、肩ぐらいまであるスピーカー、ベッド、コタツがあった。それでも余裕で4人がゴロゴロできた。さらに、自室にトイレットまであった。放尿プレイし放題である。驚きに圧倒されるチンピラ3人をフジモはリビングへと案内してくれ
た。“呑み”はリビングで催されるようだ。リビングに入って驚いた。そこには煖炉があった。ジャージーをカバンに潜めたままのチンピラ3人はリビングの床に静かに正座した…。



つづく。
【歌謡日“伍”】





ナイスハプニング。



決闘から数日後、ボクはコスプレイヤーをギタリストからドラマーへと進路を変更するように説得した。コスプレイヤーはすんなりと受け入れた。そら、そーである。あれだけの実力差があれば納得であろう。所詮はギターを担いだ“ケンシロウ”の“コスプレイヤー”だ。あの決闘が“ギタープレイ”でなく、“ケンシロウのコスプレ”だったらナカムラ君の圧勝だったが、あとのカーニバルだ。いや、そもそも“ケンシロウのコスプレ”という決闘自体がありえない。とにかくナカムラ君の説得に成功したボクはオオクマ君を巻き込んだ。巻き込まれたオオクマ君も嫌そうではなかった。そして幸運なことにオオクマ君の弟がベースを弾いてくれるというナイスハプニングもあり、ついに、まんまとバンドを結成することに成功した。ボクはボーカリストとしての出発になった。オオクマ君の提案で、まずはコピーから始めることになった。それはまだ、ナカムラ君のアヌスが見世物にされる随分と前の話である。



つづく。
【歌謡日“四”】





決闘。



秋が冬へと衣替えをするころボクは公園で決闘を見た。それはナカムラ君とオオクマ君のギタープレイ対決だ。黒のブーツカットに革製のダブルのライダースを着たワイルドな風貌をしたナカムラ君に対峙するように立つオオクマ君は嫌味のない“さらり”としたオシャレ感を醸し出した服装だった。先に動いたのはオオクマ君だった。腰にぶら下げた小型アンプから歪んだ音で流れ出したのはボクが好きなバンドの曲のオープニングだった。ボクは単純に“凄い!”と思った。ボクの目の前には“見たことのないオオクマ君”が立っていた。そして次から次へとボクの知っている曲を弾いている。ボクにはオオクマ君が“ミュージシャン”に見えた。憧れていた“ミュージシャン”の肩書きをオオクマ君は持っていた。オオクマ君のギタープレイが終了した。ボクはオオクマ君のギタープレイに圧倒された。しかし、それはボクだけではなかった。ナカムラ君だ。様子のおかしいナカムラ君はボクに急かされながらギターを取り出したが、ストラップがないために片足立ちでギターを構えた。片足立ちするナカムラ君を横から見ると足が数字の“4”になっていることに気付いたボクはオオ
クマ君と二人でナカムラ君の“4”を楽しんでいた。ナカムラ君は重心が安定しないようで片足立ちのままフラフラと倒れそうになったり、それをこらえようとして片足でホップ・ステップ・ジャンプしたりと騒がしかった。結局はナカムラ君はギタープレイを披露しなかった。むしろ披露したくなかったのだと思う。なぜならナカムラ君が用意していた曲は“さくら”だったからだ。ギターの決闘はオオクマ君の圧勝で終了した。帰り道、ボクの横には“ミュージシャン”と“ケンシロウのコスプレイヤー”が並んでいた…。



つづく。